お知らせ

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第12回(2021度)学会賞 決定のお知らせ

2021年09月16日

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第12回(2021度)学会賞 決定のお知らせ

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一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会 会員各位

一般社団法人 日本福祉のまちづくり学会
学会長 佐藤克志
学会賞選考委員会委員長 長谷川万由美

 学会賞選考委員会による厳正な審査の結果、日本福祉のまちづくり学会、第12回学会賞受賞者を次のとおり決定しました。

(1)学術賞

○選考過程
 福祉のまちづくり研究(第21巻2号(2019年7月)から第23巻Paper号(2021年3月))に掲載された8編の原著論文を対象とし、選考委員会で審議し、信頼性・妥当性・新規性・分野間連携等において総合的に優れた内容を有する論文として、次の2編を表彰に値すると判断した。

  1. 石塚 裕子:『災害と障害-インクルーシブな防災を実現するための視座-』
     (福祉のまちづくり研究, 第21巻3号, 2019年11月15日発行)

○選考評
 本研究は、災害時の障害に着目し、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震における障害当事者の提言の整理と、熊本地震における障害者の避難実態調査および課題の整理を通して、インクルーシブな防災を実現するためには災害に備えた地域づくりに多様な人々が参画するプロセルが必要であることを提言したものである。阪神・淡路大震災以来25年を経ても、災害時の障害という問題が未だに解決できていないという認識から、災害と障害を新たな視点で捉え直して論を展開した、優れた論文であると判断される。以上、学術賞に相応しいものと評価する。

  1. 土橋 喜人, 鈴木 克典, 大森 宣暁:『公共交通機関の優先席の実効性に関する考察-札幌市営地下鉄の専用席と関東圏地下鉄の優先席の比較調査より』
     (福祉のまちづくり研究, 第22巻1号, 2020年3月15日発行)

○選考評
 本研究は、我が国で唯一「専用席」の名称を有する札幌市営地下鉄と、関東圏の地下鉄を対象に、公共交通機関の優先席の実効性を検証したものである。札幌市営地下鉄に関する過去の資料の入念な調査と広範にわたる関係者へのインタビュー調査によって、専用席導入の社会的背景を解明し、車内観測調査およびアンケート調査により、優先席の利用実態と優先席に対する意識を明らかにした。これまで十分な研究の蓄積がない優先席に着目し、我が国において心のバリアフリーを浸透させる上でも有益な知見が得られた論文であると判断される。以上、学術賞に相応しいものと評価する。

(2)市民活動賞

○選考過程
 2021年1月13日付け会告により、募集開始。各支部長等にも推薦依頼。3月31日に応募の締め切り。応募件数3件。選考委員会内での審議およびZoomヒアリングにより、「主体の当事者性」、「活動開始と継続の経緯」、「具体的活動内容と実施の頻度と年数」、「多様な人々の連携のあるなし及び関与する人数」、「展開する活動の内容とバラエティ・活動の成果(質的量的な波及効果)」、「他の類似活動と比較した場合の優位性」に基づいて、表彰対象を吟味。各委員からの意見を集約し、次の2件を表彰に値すると判断した。

  1. 活動名:知的障害者等への「わかりやすい」情報の提供・普及活動
    団体名:一般社団法人スローコミュニケーション(横浜市)
    体表者:代表理事 野澤和弘

○選考過程
 本団体は、知的障害者の権利擁護や「わかりやすい」情報提供の研究に関わってきた研究者・福祉関係者らが中心となって、2016年に設立された。代表理事の野澤氏は、1996年から知的障害者の親の会である全日本手をつなぐ育成会で発行されていた知的障害者向けの新聞「ステージ」の創刊に関わり、2014年の休刊後も知的障害者向けに時事情報を届ける媒体が必要との思いから本団体の設立に至った。主な活動として、話題のニュースや障害者に関連のあるニュースに振り仮名と音声を付けた「わかりやすいニュース」を、週1回、ウェブサイトと専用アプリに配信している。また、各種パンフレットなどの「わかりやすい版」の編集も行い、文部科学省の生涯学習啓発リーフレット、横浜市のDV相談、避難行動計画、住宅防火などのパンフレット、豊田市の成年後見制度利用促進計画に関するパンフレット等を受託している。その他、福祉事業所や公共施設職員などに対して、情報保障のあり方や「わかりやすい」情報提供に関する研修、書籍や冊子の発行などの活動を行い、知的障害者等に対する情報面での合理的配慮を促進する上で重要な役割を果たしている。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

  1. 活動名:脊髄損傷者及び重度身体障害者の社会参加の促進、福祉の増進活動
    団体名:特定非営利活動法人沖縄県脊髄損傷者協会(沖縄県浦添市)、
    体表者:理事長 仲根 建作

○選考過程
 1984年に発足した団体であり、計80名の会員の多くは車椅子や電動車椅子利用者である。行政、大学、他の当事者団体等と連携・協力して、障害当事者視点でのバリアフリーに関わる調査や研究、啓発、政策提言など、多面的なバリアフリー活動を活発に行っている。具体的には、投票所、道路・歩道、ノンステップバス路線計画、モノレール駅、銀行のATMや点字案内板、障害者用駐車場等のバリアフリー化において、重要な役割を果たした。その他、「沖縄県障がい者スポーツ協会」の設立、障害者就労支援事業所「障がい者Tサポートおきなわ」の開設、ITを活用した社会参加推進のための活動、マスメディアやSNSによるバリアフリー情報の発信、沖縄県の障害者行政計画に対する当事者意見反映のためのネットワークづくりなど、沖縄県内障害者団体の中核的役割を担っている。以上、市民活動賞に相応しいものと評価する。

学会賞選考委員会
 長谷川万由美(委員長)
 鈴木克典
 三宮基裕
 須田裕之
 中野ひとみ
 丹羽太一
 松田雄二
 山岡俊一